夜空を見上げると、いつか無数の光がまたたく日が来るかもしれません。それは星ではなく、人類がつくった「宇宙のデータセンター」です。
夢物語のようですが、世界の大企業がいま本気で取り組んでいます。
なぜ、宇宙なのでしょうか。
理由はAIにあります。
AIを動かすには、たくさんの電気と、機械を冷やすための大量の水や土地が必要です。
地上のデータセンターは、すでにその限界に近づいています。
一方、宇宙には、遮るもののない太陽の光が、ほぼ無限に降りそそいでいます。
この巨大なエネルギーを使えば、地球の資源を減らさずにAIを動かせるかもしれない。
そう考えられているのです。
グーグルのピチャイCEOは、太陽が生み出すエネルギーは人類が持つ発電量すべての100兆倍を超えると語っています。
使いきれないほどの力が、宇宙には眠っているのです。
計画はすでに動き出しています。
グーグルは2025年、自社のAI用チップを積んだ衛星を宇宙に並べる「サンキャッチャー」という構想を発表しました。
スタートアップのスタークラウドは、実際に高性能チップを載せた衛星を打ち上げ、宇宙で初めてAIの学習に成功したと伝えられています。
スペースXやアマゾンなども、次々と参入を表明しています。
その計画は、けた外れです。たとえばスペースXは、最大で100万機もの衛星を使う構想を当局に申請したと報じられています。
ここで、少し想像してみてください。宇宙に浮かぶ何十、何百という衛星が、光の通信でたがいに結ばれ、一つの大きな計算機として動きます。それはまるで、無数の神経細胞がつながって働く「脳」のようです。
しかもその脳は、地球全体を見おろしながら、休むことなく考え続けます。人が宇宙に巨大な知性をつくり出そうとしている。
そう考えると、これは神の創造とも言えるでしょう。
しかし宇宙には、手ごわい壁が立ちはだかります。
真空の宇宙では熱を逃がしにくく、機械がすぐに熱くなってしまいます。
強い放射線が精密なチップをこわす心配もあります。
大量のデータを地上とやり取りする通信も、まだ実験の段階です。世界中の技術者が、いままさにこれらの課題に挑んでいる最中なのです。
宇宙の「巨大な脳」は、まだどこにも完成していません。それでも、人類が地球の外にまで知性を広げようとしていること自体が、歴史に残る大きな一歩。
いや神の領域に足を踏み入れたとも言えるでしょう。
