アメリカのデータ分析企業パランティアが、日本政府との関係を深めています。
軍事や防災の分野で名前を聞くようになった会社ですが、実は日本ともすでに深いつながりがあります。
パランティアが日本に進出したのは2019年のことです。
損害保険大手のSOMPOホールディングスと、半分ずつ出資して合弁会社をつくりました。
翌2020年には富士通とも提携し、同社のソフトを日本の企業や自治体に届ける仕組みを整えています。
合弁の相手であるSOMPOは、保険のリスク分析などにパランティアのシステムを使っているとされ、その技術はすでに私たちの生活の近くで動いているのです。
パランティアは、形式の違うバラバラのデータをまとめて分析することが得意な会社です。
民間企業や自治体向けには「ファウンドリー」、政府の軍事・情報部門向けには「ゴッサム」と呼ばれるサービスを用意しています。
その力は、災害のときにも使われました。2024年の能登半島地震では、被災者の情報をまとめる仕組みに同社の技術が活用されたと報じられています。
衛星画像や住民の情報、避難先の場所などをつなぎ合わせ、「誰が、どこにいて、どんな支援が必要か」を把握するのに役立てられたとされます。
SuicaなどのICカードを使って、避難した人の所在を確かめる試みも行われました。
そして今、最も注目されているのが防衛分野です。
パランティアは、米軍が使う「メイヴン」という、作戦の立案を助けるAIシステムを提供しています。
日本経済新聞などの報道によれば、防衛省の幹部からは「一刻も早く導入すべきだ」という声が上がっているといいます。
背景には、米軍と自衛隊が力を合わせて動くとき、同じ仕組みを使えたほうがよいという事情があります。
現代の戦いでは、情報を集めてから判断し、行動に移すまでの速さが勝敗を左右するといわれ、AIによる意思決定支援への期待が高まっているのです。
自衛隊はこれまで、指揮統制の中枢にAIを使ってきませんでした。
政府は、2026年末に予定される安全保障関連の文書の見直しで、指揮統制へのAI活用を盛り込む方針とされ、2027年度の予算にも関連費用を求める見通しです。
2026年3月には、共同創業者のピーター・ティール氏が高市早苗首相と約25分間面会し、SNS上でも大きな話題になりました。
日本での本格的な事業展開に向けた動きだとみられています。
一方で、慎重に考えるべき点もあります。
ひとつは「データ主権」の問題です。国の重要な情報を外国企業のシステムにゆだねることには、他の国でも懸念の声があります。
アメリカには、米企業が持つデータに自国の当局がアクセスできる仕組み(クラウド法)があり、スイスやフランスではこうしたリスクを理由に、導入を見送ったり国産のものに置きかえたりする動きも出ています。
便利さと安全保障、そして個人のプライバシーを、どう両立させるのか。答えは簡単ではありません。
パランティアと日本の関係は、遠い世界の話ではなく、私たちの暮らしや安全に関わるテーマです。「なんとなく怖い」で終わらせず、事実を知り、どんなルールのもとで使うのがよいのかを考えていくことが大切なのです。
